サムライせんせい最終話続き(5)

 夜景の屋上。ギリギリまで抜刀しないまま、必死にアザを止めようとした武市さん。しかしアザも一歩も譲らず。



 もう、本気で龍馬と戦わざるを得ない。武市さんの目は潤んでいて。口を薄く開いて、哀しい目で龍馬を見据えたまま。刀の鯉口を切って、するるっと鞘を落とすのが、ゾクッとするほどカッコ良かった!



 とうとう刀を抜いた武市さんが、切なくも、最高に色っぽいのでありました。




 という所まで前回書いたのですけれど。この鞘を落とすというのは、通常あんまり無いのですってね。刀を使ったら(というか勝ち残った人は)腰に差した鞘に、手元を見ないでシャキーンと刀を戻すのでしょう?(〜ぷりんでもパレットナイフでそれに模したヤツやってはってんな)。




 しかしこの時の武市さんは、たとえ勝っても無二の友アザを斬ることになるから、もう後は無いというか、ハナから相討ちの気持ちというか。そんなこんなで鞘落としはったんかな〜、なんて思いました。あのゾクッとする目の色はそんな哀しい決意と覚悟も含んでいた気も致します。




 さて、こうしてついに迫力ある殺陣に突入!(龍馬の洒脱な殺陣も、もちろん素敵でしたが、あたしゃ武市さん係につき、例によってほぼ武市さんのことばかり書いちゃうのでお含み置き下さいね)。





 殺陣の最初のほうで、光源を背に2人のシルエットが浮かび上がる演出も粋でしたけれども(錦戸さんの高いお鼻、キレイな横顔の線も映えるし)。錦戸半平太さん、やっぱり体幹・姿勢・動きがキレイ!跳躍も高い!あと前にも書いたけど、体の止めがカッコいい!!




 それからカメラが寄って、2人の決死の表情をとらえ。互いに斬り合ってそれぞれの頬に、あっ傷が…みたいなシーンも素敵。龍馬がちょっと傷を指で触るようにするのもセクシーでしたし(この間まで、カッワイイ声で、坊、泣いちゃうぞ、とか言うてはったのに)。




 武市さんの、一瞬目を伏せてチラっと傷を見てから、鋭い目で龍馬を見る、みたいなのも色っぽかった。バサバサ長マツゲ付の大きな瞳だから、かすかな動きも見る者にすごく届いて、ハッとさせんねんな〜。




 考えてみますと、最終回までは、モップとか傘とか竹ボウキとかバトンとか、刀でないもので殺陣をされていたけど(てか日本刀振り回したら捕まっちゃうしね)、ついに最終回は真剣勝負!という感じも出て、「お顔に傷がっ!」シーン、良かったと思います。




 そして再びシルエットで戦う2人。武市さんのターンも決めポーズもキレッキレでカッコいい。




 さらに、龍馬が刀でライトのスイッチを入れるという、現代に適応した歌舞伎者らしい技に出て、光で目をやられた武市さんが前転して身をかわし、いざって(=膝で歩くみたいな)刀を振るのも。




 必死に応戦する武市さんのお顔が屋上のへりからせり出て、その下に、六本木の街並みが見えるのも(きゃ〜やめてよ)、迫力がありましたし。




 圧巻は、赤く光る東京タワーをバックに、壇の上で激しく斬り合うシーンかしらね。




 まず壇の上に武市さんがくるっと回転して飛び乗るのも、龍馬がピョンと跳ね乗るのも見事で(あの辺トランポリン使用のやつかな。実に鮮やか)。




 赤い東京タワーを背景に、それぞれの構えを取る姿も美しく映え。壇上でカキンカキンしのぎを削る殺陣がすごい緊迫感でした!手数が多いというのかしら、息をもつけぬ激しい動きの中、ちょっと口を開けて刀を振るう錦戸さんのアップが入って、それがまた色気があってのぅ。



 壇から降りる時には今度は龍馬がくるくるっと回転しながら、武市さんは高く跳躍して飛び降りるのもカッコいい。



 息を呑む、美しくも迫力満点の殺陣でした。



 謹厳実直で免許皆伝の腕前の武市さんらしい、体幹の綺麗な正統派殺陣をベースに、段取りを覚えるのも呼吸を合わせるのも、非常に難しそうな複雑な動きが多数、組み込まれていたというか。




 すごく高い身体能力やセンスが必要だと思うけど、殺陣の演出家さんのハイレベルな要求に十二分に応えはったというか。




 それも草履履き&おそらく詰め物ぐるぐる巻きの和装という動きにくい格好で(侍だから当然かもしれないけど、とっても大変なことよね)。





 この屋上の殺陣をくさなぎのつよしさんもご覧になっていて、後に週刊朝日の記事で、




 錦戸君が「サムライせんせい」でテレビ朝日の屋上で刀振り回していたけれども、「すごく体が動くんですよ。『なかなかやりおるな。まだまだ若手には負けてられないな』って思いました」




 というような事をおっしゃっているのですわね。くさなぎさんって、かつてバック転連続10回されちゃったのですって?そのように身体能力が高くて、時代物の経験も多い方が錦戸さんの事をすごく体が動くとおっしゃって、嬉しゅうございました!




 さて、こうして2人が死闘を繰り広げる間、晴寅姉弟も屋上に駆け付け、晴香さんはネットに帳簿のデータをアップ。テレビにも乱入して海道の悪事を世に知らしめ。




 自分を助けて仲間同士で斬り合う2人を嘲笑する海道に、寅ちゃんも、もらったお金を叩き返し。青くなった海道と肩を組んで寅ちゃんもテレビに映り込んで、そんなに上手いこと言っていないけどドヤ顔を決め。




 突然テレビに出てきた晴寅を、佐伯さん、サチさん、理央殿、ママたちという神里村の面々が賑やかに見ているシーンも愉快でした。(キャストさんみんなナイス!)





 一方、壇上から飛び降りた武市さんは龍馬を刀の柄で突き、一瞬マットに身を沈めてから戻ってきた龍馬と武市さんが、刃を合わせてギリギリ押し合っている所へ、「動くな。2人とも刀を捨てろ!」と氏家殿。ビクッとするアギアザ。




 「武市さん。武市さんは関係ないって言い通せ」とアザ。(この時のアザの鋭い目も良いけど、一瞬背後を振り向いた武市さんの必死の横顔が美麗!以下神木くんもことごとく良いけどフィーチャリング武市さんで参ります。ってさっきも書いたか)。




 と、走り出したアザに銃を向ける氏家殿。それを見て大きな目を見開き、身を躍らせてアザを庇う武市さん(キャ〜男前!)。発砲。倒れ込む武市さん。




 「ちょんまげ!!」「武市さん!!」「アギ!!」3人の悲痛な叫び。




 駆け寄るアザ。「何しゆうがじゃ?!アギ!アギ!」武市さんの体を揺さぶるアザの手はべっとりと血塗れ。




 「どういて庇うたりした?」
 「体が勝手に動いてしもた」(と薄く笑いながら言う武市さんの表情ナイス。弱った声もちょっと涙声みたいにくぐもっていて良いと思うの)




 「今まで斬り合うちょった相手ぜよ?!」
 「けんど、唯一無二の親友じゃき」(なんて男前なことを、やっぱり薄く笑いながら、段違い眉をひょいと動かして言う武市さん、素敵!)




 「わしは撃たれたがか?(と武市さんがちょっとしゃがれた声で言うのが見事)」「違う!安心せい。撃たれちゃせん」「アザ!」



 「もうしゃべるな。心配せんでえぇ。もう武市さんを死なせたりせんき!」必死に言うアザを見つめる武市さんのウルウル瞳の美しくも哀しいこと!




 血塗れの手に構えた短筒をキッとした目で氏家殿達に向けたアザは「動くな!」と叫び、武市さんを肩で引きずるように去って行きます。




 そんなアザにもう一度発砲した氏家殿は、後を追うと、階段に2人の姿はなく血痕が残るのみ。「マルヒは武装していると通達。周囲を固めろ」指示する氏家殿。




 しかし、翌日になっても2人は見つからず、うつむく佐伯家の面々。武市さんと楢崎さんは生きてるよね?!と泣いちゃう晴香殿。




 シーン変わって、人気のないダム脇の道を走ってくる車。スーツの男が運転席から降り、トランクを開けると血のついたブルーシートからのぞくちょんまげと血塗れの手。ブルーシートをはがすと、向き合って横たわるアギアザ。





 乙女らがきゃ〜〜!と肝を冷やしたと思われる瞬間、「着きましたよ。武市さん、楢崎さん」と穏やかな声が掛けられ。





 身じろぎして「おぅこれはご無礼致した。すっかり寝てしまいました」とのどかに起き上がる武市さん。




 ん〜あぁ〜良く寝た〜と龍馬も無邪気に目を覚まし「大丈夫でした?氏家さん?」と尋ねます(ここ、トランクから上目遣いで氏家殿を見るアギアザがキュート!)



 「都心全域に検問を張ってますが、警察の車両までは調べませんからね」
 「町奉行所に同志がいるとは聞いておりましたが、まさか氏家殿だったとは」と笑顔でトランクから乗り出してくる武市さん。



 トランクで横たわる武市さん、例の手を足にはさむ黄うたたねスタイルだった!なんて思うのはファンのサガですけれども。このトランクシーン、錦戸さんのあたかも直前まで本当に寝ていたような、ちょっとぽや〜っとした寝起きっぽい声と表情がリアルでナイスだと思いました!




 以前家の近所でとあるドラマのロケがあってな〜、あたくし見に行ったのだけど。何気ないシーンでも、テストだかリハーサルだか、事前にそれはもう何度も何度も、もうえぇんちゃう?っちゅう位繰り返して、やっと本番に至っても、何回か撮り直すみたいで。ドラマの撮影ってこんなに大変なのね、と痛感しましてね。




 何度繰り返しても、初めて起こった事みたいに表現できる、本番に至るまで緻密に確認作業を繰り返していても、あたかも本当に直前まで寝ていたように見せられるのが、役者というものね〜、さすが、と思っているのであります。(ちなみに映画「抱きしめたい」のようなテスト無し長回し一発撮りでも監督の欲しいものバチコ〜ン出すのも錦戸さんのスゴイ所ですけれども)。




 しかし、武市さんの体に触れたアザの血塗れの手も、アザが用意していた血糊やってんな〜。やだよぅ、心配させて。




 負傷していたら遠くには行けまいと検問を張るのも都心止まりになったり、それで見つからなければ、近隣の医療施設を当たったりしそうだから、血糊って脱出に役立ちそうですけれど。




 あのように、武市さんがっ?!嗚呼!!みたいな見せ方なんですもの。それも含め、その他諸々の演出も、最後まであたくしどもをハラハラさせてくれようとしたもの、と思っておりますけれど。




 ともあれ、お2人共無事で、同志・氏家殿のおかげで脱出も成功して良かった〜!という所で、また次回に続きます。次回で最後かな、多分(←酔狂な方へのお知らせ。こんなん最後まで読まれた方には「かな〜り酔狂で賞」を差し上げようかしら←要らんわ)。ほなね。