地井さんのこと

 番組をお休みされると聞いたのが、ついこの間だった気がするのに。俳優さんとしても、これからますます活躍され、そしてずっとお元気にどこかの町をお散歩されて、人々と気さくに触れ合っていく方だと思っていたのに。地井さんの突然の訃報には大きな衝撃を受けました。




 追悼番組で、5年ほど前、地井さんがご実家に帰られた時の映像が流れ、その時ご実家に集結しておられた地井さんの快活な姉様方も映っていました。よもや、末の弟に先立たれるとは思っておられなかったでしょうから、今はさぞ皆様お力落としのことだろうと胸が痛みますけれど。




 その映像の中で、そんな姉様方に頭が上がらない地井さんのご様子が、年長者にこう申し上げては何ですけれど、とても微笑ましく見えました。そして、あんな風にご家族皆で末っ子・地井さんを、口々にかまって可愛がって、にぎやかに暮らして来られたのだろうな、と思いました。




 洋裁の心得がおありの姉様方は、小学校の時の劇で、地井さんに袖がふわっと広がっているような白いシャツと、緑のベストを作って着せて、可愛い弟をバッチリ目立たせたということで。周りが普通な衣装の中、そうやって注目を浴びたことも、俳優を目指したことと無縁ではない、というニュアンスのことを地井さんはおっしゃっていたと思います(記憶に頼って書いているので、勘違いがあったらすみません)。



 さらに、その時、既にお母様はなくされていたけれど、ご実家で地井さんが語られたお母様の思い出話も印象的でした。かつて地井さんが、来るお話が刑事役ばかりで、役者としてのテンションを保ちにくくなった時期、お母様に役者辞めようかな、と漏らされたことがあり。いつも優しいお母様だから、まぁ色々な時期があるわよ〜というような柔らかい反応を期待していたら、「自分の選んだ道で愚痴るもんじゃない。ちゃんと落とし前つけなさい」とピシッとおっしゃったということで。




 ああ、地井さんの飾らない、実がある感じのお人柄は、ああいう朗らかで、でも勘所はグッと押さえたご家庭で育まれたのだな、と思いました。もちろん環境だけでなくて、持って生まれた資質やその後のご自身の努力もあって、あそこまで皆から愛され信頼され、大勢の人が心底哀惜の涙を流すような方になっておられたのだろうと思いますが。






 ここで、錦戸ファンとしての気持ちを書かせて頂くと、いつかまた親子役で共演してほしい、と思っていたので、とても残念です。



 地井さんは、13年前に共演された際、小さくて愛らしかった錦戸さんを、亮、亮、と可愛がっておられただけでなく、演技に関して「亮は、行と行の間にある気持ちを読み取る天性のカンみたいなのが備わっていて、すごい」とおっしゃっているのですね。





 哀しい場面の錦戸さんの切ない表情のことも「また良い顔をするんだ、この子が。向こうで見ていてびっくりしちゃった。そんなに芝居上手かったの?教えてくれよ、俺に」というようなことをおっしゃっていたと思います。




 地井さんが、こんな風に、錦戸さんの俳優としての天賦の才に、いち早く言及されたということは、ファンとしてはとても嬉しいことでした。




 そして、そんなお二人だから、また親子役で共演されるのをぜひ見てみたいと思っていました。




 かつての、末っ子が可愛くてしかたないお豆腐屋のお父さんと、お父さんに心配かけたくなくていじめのことを黙っている小学生もとても良かったけれど。




 錦戸さんが大きくなった今なら、もう小学生でなくてもっと大人な、放蕩息子でも、孝行息子でも何でもOKだし、ハードな確執に満ちたものから、ハートウォーミングなものまで、あのお二人なら、どんな親子でも幅広く自在に演じられたでしょうに。




 それも叶わぬ夢となってしまいました。




 地井さんにお世話になった関ジャニ∞の他のメンバー、村上さん、丸山さん、安田さんは、かつて番組で偶然再会して、さらに昨年ご自分達の冠番組にゲストとしてお呼びして、何か一つ形としてお見せすることができたということで。地井さんも、とてもそれを喜んでおられたご様子だったということで、それは本当に良かったな〜と思うのですが。錦戸さんとの再会の場面は見たことがないので。



 どこかでお二人が再会されて「おぅ亮、大きくなったな」と話されることはあったのか、せめてそれが知りたい、と思いました。できれば、お豆腐屋さん以降の、錦戸さんの色々なお芝居について地井さんが何かまた言及されたことはなかったか、それも知りたい、と思いました。




 そして、このあたりは錦戸ファンとしての思いですが。





 そういうことを離れても。地井さんのあのあたたかい笑顔をもう見ることができないと思うと、ただもう純粋に、哀しいです。



 地井さんのご冥福をお祈り申し上げます。