陰陽屋11(最終回)の2(これでラスト)

 超今更ですけれど、昨年の暮れに書いた陰陽屋11(最終回)の1の続きで、これで陰陽屋さんについてはラストの覚書です。



 前回あたくしは、最終回も悪役に徹して、スルッとすべてを解決して、何も言わずに去って行く祥明さんがカッコ良かった! と執拗に書いたのね。




 商店街にいる間に、路子先生に進みたい道は「教授より教師」と気付かせ、源次郎さんと照子さんたちを和解させ、瞬太くんを安倍家からも記者からも守り、瞬太くんには、皆がキツネと知って受け入れ愛してくれていたと知らせ、他にもたくさん、人々を幸せにして、自分は憎まれ役のまま去って行く祥明さんが、やたらカッコ良かった!と。




 そしてそのように、皆が幸せなら自分は何と思われても良い、みたいに、基本的に人のことを考えて人の問題を解決してきた祥明さんが、最終回、自分はこう思って、こうさせて頂きますと、はっきり語った安倍家問題のクダリもまた、とってもカッコ良かった!それについては次回書かせて〜ってなことを口走って去ったものですから。一応この安倍家問題のことだけ書いて、その後、ラストの祥明さん素敵ポインツに移ろうと思います。






 安倍家問題については、10話で初めて、サツキさんが「いいんだよ、ヨシアキは、安倍家のしきたりになんか縛られなくたって」と言う回想シーンを見た時、それって特殊能力者でないことは気にするな、ということかな〜とか書いたのですが。それもちょっと関連しつつ、そもそも安倍家を継ぐことはない、ということだったような。





 幼い頃から祥明さんは、安倍家の跡取り候補として、その期待に応えるべく、一生懸命本を読み漁った。妖狐のお祖父様と違って、祥明さんは普通の人間だし、前にちょっと脱線気味に書いたように、特殊能力者ではない分を知力でカバーせねば、という所も実際あったかもね。





 それで、こもって本ばかり読んで、普通の子供らしいことをしない甥っ子がサツキさんは心配だったのかも。(妖狐の血を引くサツキさんにとっては、皆と同じに、ごく普通に過ごすことこそ望ましいことだった、とかも有りかしら)。実際、学校ではいじめられていたという祥明さん。でも瞬太くんが言っていたように、それだから他の人の気持ちとか困っていることとかが分かるようになった部分もあり。愛すべきお節介・マッキーが柔道やキャッチボールなんかも教えてくれて、チビ祥明さんは、頭脳だけでなく、心も身体も良い塩梅に成長していったのね。






 そして、長ずるにつれ、祥明さんの中に、安倍家のやり方への疑問が生じたという。それはお腹の子に安倍家を継がせたくなくて家を出たサツキさんも抱いた疑問だったかもしれないし、サツキさんにはまた別の思いがあったのかもしれないけど。





 祥明さんの場合は、そんな安倍家を継ぎたくなくて、ただそこから姿を消すのでなく、代わりに継いでくれる人を探そうとする所がきちんとしているのですわね。更に、探し出した瞬太くんが商店街にいたほうが幸せだと知ると、安倍家をご自分が継ぐことにするのが、本当にまず人の気持ちを考えて優しい子や〜ん、という感じですが。





 それが周りの皆にとってベストの解決法だから、ご自分は我慢したまま安倍家を継ぐ、というのでなくて。祥明さんにとってもベストの答えを出していたのだ!ということが分かったのが、最終回でのお祖父様への次のセリフです。記念書きで全部書いちゃう。さっきも書いたけど、それまでご自分の本心を語ることがほぼなかったから「自分はこう思って、こうさせて頂きます」ときっぱりおっしゃるのが目覚ましくて印象的でしたの。




 「お祖父様、ただいま戻りました。私が安倍家を継がせて頂きます。


 ですが、お祖父様のようには致しません。



 陰陽師が怪しげな呪術を駆使して闇の世界を支配したのは平安時代までで十分です。しかし、未だに安倍家は権力者を操り、時代を陰から動かそうとしている。私はそこに疑問を感じておりました。


 ですが、一介の占い師となってみて分かったのです。私が持っている知識は市井の人々を救うこともできると。元来、陰陽師が退治していたのは、得体の知れぬ魑魅魍魎などではなく、人間の心に棲む鬼だったのだと私は思います。私には妖術も霊感もありません。できるのは、ただ、人の悩みを聞き、歪んだ心をほんの少し直すことだけです。私は私のやり方で、この道を歩ませて頂きます」





 これカッコ良かったわ〜。安倍家を継ぐけれど、権力者の黒幕にはならず、市井の人々を救っていく、それでよろしいか、とお祖父様にお伺いを立てるのでなくて、既に報告だったというか、宣言だったというか。静かな品格の中にも強い意志が感じられる凛とした瞳も、きっぱりした口調も素敵でした。〜ぷりんでの修練のおかげもあってか、深いお辞儀等の美しい所作も清々しい!ハードルの高い標準語の説明的な長セリフも良い感じになっていたのではないでしょうか。





 ファンとしては、あのカッコ良い祥明さんを、魅惑の垂れ目さんが演じられた陰陽屋さんは、とっても良いドラマだったと改めて思います。





 ということで、ようやく最終回の祥明さん素敵ポインツ。




 冒頭、狐火で、源祥が互いに瞬太くん周りの秘密を打ち明けるクダリ。源次郎さんの「で。おめぇさん、瞬太をどうするつもりだ」に薄く笑って「どうするんでしょうねぇ」とちょっと首を傾げた後、ふと真顔になる祥明さんの表情がナイス。さりげない表情がほんと魅力的な青年よね〜。





 そしてマッキーがお祖母様を陰陽屋に連れてきちゃうシーン。「お祖母様!」「お久しぶりねぇ、祥明さん」「ご無沙汰しております」なんていうハイソサイエティーな感じのやり取りが、錦戸さん、きっちりハマっていたわ。ブラボー!普段は気さくでお茶目な青年かもしれないけど、さすが俳優さん、やんごとないお育ちにちゃんと見えました(彼自身のお育ちも賑やかでハッピーな感じだけど)。





 そこへ入ってきた瞬太くんの正体にお祖母様が勘付いた様子に、動揺するお顔も良かったです。(デコ出し好き・烏帽子好きだけど、このクダリの前髪有りの狩衣無眼鏡姿はやっぱりキュート!と思いました)。




 そしてお祖母様は、安倍家の書斎の片づけのアルバイトを瞬太くんに頼み(アルバイト代は弾むっちゅうて、ちょっとワルイ顔しはってんな・笑)、呑気なキツネくん一人で行かせたら必ずボロがでる、一緒について行ってくれないか、と祥明さんが路子先生に割と尊大に頼むんだけど。





 幸せそうに焼き芋を食べている路子先生のコートの襟をガシっと掴んで「イモ食ってる場合じゃないんだ」と言う祥明さんも、そのままグイグイ連行され、陰陽屋で話す間も、何度となく焼き芋を食べようとしては祥明さんに阻止される路子さんも、面白キュートでしたわね。






 そして路子先生がわざとお茶をこぼしたりして、キツネくんのボロが出ないように頑張っている頃、祥明さんは陰陽屋で、さっきも書いた「いいんだよ、ヨシアキは〜」とサツキさんに言われる場面を再び回想するのだけど。その頬杖をついて物思いに耽る表情がアンニュイ&キュート!さすが、頬杖が宇宙一似合う青年(とお友達が言っていたの)。そこへ「すみません〜」とラブリー三井さんが訪れ、祥明さんが、ふと我に返る表情もすばらしい!瞬きとか目線とか、なんかすごく良い!





 その後の、化け狐を退治する偽儀式の練習のクダリは、祥明さんが、間合いよく皆さんを指導する様子も堂に入っていて、愉快でしたわ。こなれた感じで「…という筋書きでございます」と段取り説明を締める笑顔もキュートでした!烏帽子をかぶったお顔がまた端整ですばらしい!





 その後記者さんを呼び出してビール立ち飲み、のクダリ。「それなりの報酬は頂きますけどね」とウソブく祥明さんがちょっとワルい感じで素敵。でもやっぱり子犬くんみたいでカワイイとか思っちゃってすみません。




 そして儀式本番前、儀式のことで、祥明さんがマッキーに頼み事をするキャッチボールのシーン。お世話焼きで、かつて、嫌がる祥明さんにキャッチボールや柔道を教えようとしたマッキー。「でも正直、嬉しかったよ」と素直に笑う祥明さんが素敵!あとこれは前書いたけど、いつもすべてを見透かしたような祥明さんの「頼む、秀行!おまえしか頼めるやついないんだよ」と珍しくアツい様子が胸を打ったのですわね。





 続く儀式本番のことは、前回結構書いたので、今回は割愛させて頂きますが。前回のエントリーで、あたくし、考えすぎな位、祥明さんの心情を汲み取っちゃっているの。ふふ。でも、そんな風にも取れる感じの、深みのある錦戸祥明さんの演技だったと思います。あと、瞬太くんを見つめながら呪文を唱えて、最後「急急如律令!」と印を結ぶクダリは、強い眼差しといい、長マツゲといい、なんと端麗!と思いました。あれがラストの「急急如律令!」でしたわね。ほんと、ぜひスペシャルかなんかでまた「急急如律令!」を見たいものだわ〜。




 それから儀式後、祥明さんが狐火に立ち寄るクダリも良いのよね。「おぅ、上手く行ったか?」と言う源次郎さんに、すべてお見通しか…、みたいに一瞬小さく笑って「えぇ」とだけ答える祥明さん。向き合う二人の深い眼差し。それから長い一礼を残して、微笑んで去っていく祥明さん。そんなこんなが全部素敵でした。そして、結局マッキーが種明かししちゃって、後を追ってきた路子先生と祥明さんが言葉を交わすシーンも素晴らしかったです。風に吹かれて微笑む祥明さんの表情が何とも良くて、(とかく、イエローさんのことは子犬の国の王子様視しがちな私にも)素敵な大人の人に見えました。




 原作を読んだ時には、キツネ要素がどうなることかと、ものすごく心配だったけれど、センスの良い楽しめるドラマで良かったです。時々日本のドラマって、米ドラマでこんなんちょっと見た気がする…みたいな時がありましょう?しかし、陰陽屋さんは何にも似ていなかった気がする。ユニークで新鮮だった気がする。さっきもこんなん書いたけど、ぜひまた陰陽屋さんの姿を見たいわ〜。





 ということで今更な陰陽屋さんの覚書を終わります。(情報量の関係で座長の事ばかり書きましたが、皆さんが素敵でした!←ざっくりしていてごめん)





 時に、次の役はどんなんかしら。次もセンスの良いドラマだといいな〜。とか言って、その前に、いよいよ映画ですわね。超ドキドキする!