映画「抱きしめたい」感想

 ネタバレありなので、ご注意!記憶で書いているので、セリフなどはいわゆるニュアンス書きです〜。色々勘違いしていたらすみません。






 お涙頂戴でない、美化しすぎてもいない、押し付けがましくもない。




 何人かの方がおっしゃっていた通り、映画「抱きしめたい」は、よくありがちな病気ものではなく、




 障害を抱えつつ、強く可愛く駆け抜けた女性と、優しいけど男気があって懐の深い男性の、キュートなラブストーリーでした。





お二人がすごく魅力的なので、すぐに感情移入できましたし。





ものすごい苦労と葛藤があったと思うけど、それを乗り越えて、ま、いっかな、と笑いとばしたつかささんのお人柄を映してか、映画のトーンも明るめで。人のいじらしさ、キュートさに胸打たれて、くすっと笑えるシーンも多く。




 二人の家族が、最初は反対して、後に暖かく応援するようになる感じがきっちり描かれていたのも素敵でしたわ。(いかついお顔をしてラブリーな雅己パパとか、皆さん良かったです)





 これから、と言う時に、つかささんが誰にもお別れできずに逝ってしまわれたのは哀しすぎるけど。つかささんは、初めて「ウォーアイニー」と雅己さんがちゃんと口で言ったのを聞いて、雅己さんの寝顔を見て幸せそうに微笑んで眠りにつかれたようですし。





 映画は、バスケの試合の後、家族や友達や、つかささんゆかりの人々が集う賑やかな宴会で、お膝に抱いた和実くんに、雅己さんがママの日記を読んで聞かせる回想の形で進み。今もつかささんはあの大勢の人々を繋いでいるんだな〜という感じがして。





 ラストも、雅己さんは、俺に出会わなければつかさは…でもそうしたら和実は…と、つかささんのことを考えながら、和実くんと確かに前に進んでいる。パパ友の輪も広げたりもして、つかささんへの思いを胸に、物語は未来に続いていく。そんな感じで終わったので、観終わった後の気持ちも明るい映画でした。だから、哀しいのは苦手、という方も大丈夫だと思うし、繰り返し観たいな、と思える映画でしたわ。







 かといって、辛いことには目をそむけたお話でなく、迫真のリハビリシーン等はリアルに胸を打つ所も、素晴らしかったです。ああいうことを母子は乗り越えてきたんだな〜、強いな〜と思って、毎回そこで泣きました。母目線の者には(そうでない人も、かもしれないけど)、あの辺り、すごくクルのよ。もう意識は戻らないだろうと言われて、それでもママが「つかさ、つかさ」と根気よく声を掛け続けて。「つかさは目を覚ましません〜」とか言っているあたりで、もう泣いちゃう。





 観客は10代20代の女性がメインということで、もちろんお若い方がキュンキュンする所がたくさんあるんだけど、人生経験が多いほど、共感ポインツもより多い気がするので(本編中ずっと、親目線やら何やらでグッと来たり、若いもんと同じ所でキュンキュンしたり忙しい)、ちょっと大人の女性から、ものすごく大人な女性まで、どんどん観て下さるといいな〜と思います。




 そして、公開日のあたりは、男性の数が1割いるかいないかだったけど。世の男性に告ぐ。映画「抱きしめたい」の北川景子さんは、とってもキュート!ぜひ劇場で、あの可愛さをご覧下さい!




 私が好きなのは、自分を部屋まで送ってきた雅己さんが帰っていく車の音を、車椅子を窓際に寄せて一生懸命追っている所。で、そんな様子を見ているヘルパーさんに「ただの友達だから」みたいな事をツンツン言うの。それとか、誤解して怒って、畳んだ洗濯物を雅己さんにぶつけて。誤解が解けて泣き笑いな感じで散乱した物を「全部拾ってきて」とか言って。「これだけ見たい」と結婚式場のパンフレットはちゃっかり手元に残して、べそをかいたまま、そそくさと見て微笑んでいるのもカワイイ!本当に、少し気が強くて、でも底抜けに明るくて、笑顔も、弾けるような笑い声も素敵なつかささんでした。






 そして、そんな素敵な人が愛する人に、錦戸さんはピッタリでした。最初の出会いの時、体育館の予約がダブって、あ〜、じゃぁ、まぁそちらに譲っとこか…みたいなちょっと逆差別のような空気になりましたでしょ?そこを雅己さんは、「フロア分けて使いませんか、いつもよりは狭くなりますけど」とリキミなく言う。逆差別とか、なんかそんなんハナから軽やかに超越しているというか、良い意味で力の抜けたニュートラルな感じがカッコいいのだけれど。そのあたりが錦戸さんにとってもハマっていたと思います。





 それから、錦戸雅己さんのバスケも、お姫様抱っこも、回転木馬も、逆立ちも、親たちとの対峙も、おんぶも、結婚式の蹴ってるよ!も、出産後の喜びのシーンも、雪中の慟哭も、キッズたちとの絡みも。




 さりげなくも細やかで豊かな表情の数々も、素晴らしかったです。




 買うものがあると、スイスイ進むつかささんを懸命に追って、辿り着いたら、女性のランジェリー売り場で。やや微妙な感じで佇んでいたら「何買うか、忘れちゃった!」と言われて「へっ?」と言う表情とか。




 アポなしで雪の中「来ちゃった」と笑うつかささんに、寝るな、ばかとか言って、急いでお部屋に入れて毛布掛けて。足をごしごし摩擦して「感覚は?」と聞くと「ない。…微妙?」なんて明るい声でふわふわ言っているつかささんに、用があったら、連絡してくれよ、すぐ繋がるんだから、頼むよ〜とか必死に言っている表情とか。




 最初は戸惑っていたバスケの仲間とも、すぐ打ち解けて、楽しく盛り上がるつかささんを、愛おしげに見る笑顔とか、飲み過ぎたつかささんを送っていって、つかさママに平手打ちをくらった顔とか。





 つかさママに事故後の病院の映像を、見て勉強して、と言われた時の、むろん全部まるごと受け止めるつもりだと挑むような表情とか。そしてつかささんの手をギュッと握って、辛くても目をそらさずに見るけれど、映像を見ている時も、無言の帰りの車でも、ずっと満々と涙をためている目の表情とか。(彼はキレイに涙を流すけれど、あそこは男気のある感じで、涙がこぼれるのを堪えているのが良い感じ〜なんて思いました)






 父親になったのが分かって、ノースリーブのバスケのユニフォームのまま、病院の産婦人科に駈けつけ、そんな彼を物珍しげに見てきた隣席の女の子に笑いかける蕩けるような笑顔とか。





 ラスト、思い出のカレー屋さんで、食べる時はゲームをしない!と叱ったら、ママを彷彿とさせる笑みを浮かべた和実くんに、一瞬胸を突かれたような顔をしてから笑うのとか。他にもたくさんハッとする表情がありました。




 今回基本的に、テストなしですぐ本番という撮り方だったとか。錦戸さんにあれこれ指示せず、自由にさせておけば、監督さんの欲しいものは手に入った、みたいなことも、どこかの雑誌で読みました。





 監督さんの信頼に、錦戸さんの演技力が応えた、ということで、そうしてできた作品が、大勢の方に観て頂けて、本当に嬉しいです。この週末もたくさんの方が観て下さることを心から願っています。今週末の人の入りもまた、とても重要だから。