サムライせんせい最終話続き(3)

 前回の続き。軽く鼻をすすって薄く目を開ける武市さん。涙に潤む目。(寝ていても完璧なホクロサイド斜め顔の美しさに息を呑む!いつ、どこから見ても男前だけど)




 「だ、大丈夫ですか?」と声を掛ける佐伯さんに、真上を向いたままつぶやく武市さん。




 「富子の夢を見ました…。わしはなんぜ生きようとしなかったんじゃろうか…。武士の名誉も見栄もすべて捨て去っておったなら、富子と一生添い遂げることもできたはずなのに」




 幼子のように涙声でそう言って、目尻から一筋の涙を流すのが切なくも美しい!




 武市さんはサムライだけど。いつも強くて正しいけど。この時だけポロリと流した涙が胸を打つ。




 また、絶妙なタイミングで涙が流れるのよねぇ。さすが錦戸亮、最高で最強。




 そんな武市さんに、慌てて佐伯さんが見せたのは、なんと、富子さんからのお手紙!




 差出人の「富子」の文字を見て、眉を寄せて探るようなお顔をして「どういうことですか?」と涙目で尋ねる武市さん。「お読みになればお分かりになると存じますよ」と佐伯さん。




 「旦那様 あなた様は決して嘘をつかないお人ですから、本当に未来の世界にいることだと信じております。どうか、この手紙が届きますように」




 大きな涙目を見張って、佐伯さんを見つめる武市さん。




 「あなた、夢で富子さんにお会いになったとお思いなんでしょうが、あなたは一度お戻りになってらっしゃるんですよ。富子さんのもとへ」




 「…そんな」(ここの戸惑いの表情もすごく良いわ〜。少し目線を揺らして小さく笑って、また佐伯さんを涙目で見る、みたいな)




 「私にも信じられません。でも富子さんは自分の夫が未来にいるという事を信じて、この手紙をお残しになったんです。それだけは紛れもない事実です」




 潤んだ強い目で佐伯さんを見つめていた武市さんは、話を聞いて、長マツゲの目をしばたたかせ、目線を泳がせて伏目になった後。「どうして佐伯殿がこの手紙を?」と再び佐伯さんを見つめるのですわね。(お話を受け入れる表情の演技も、その後のセリフの言い方も素晴らしい)




 その訳は、というと、これ前にも書いたのだけど。佐伯さんは、本当に武市さんの遠縁でしたのね。ただ、ふわっふわしたフォローをされていた訳ではなくて。




 あの土佐柏の甲冑は、佐伯さんの家に、富子さんのお手紙同様、受け継がれてきたものを、佐伯さんは校長時代に小学校に寄贈したのかな。それで佐伯さんは、初回から武市さんをあっさり信じて、受け入れたのね。武市さんにいつかお手紙を渡せる日をずっと待っていたから。




 武市さんが万感の思いで読み進めたお手紙には、




 貧乏暮らしをしている富子さんを見て心配しただろうけれど、明治政府によって武市さんの功績は認められ、家禄は回復したこと、武市さんを尋問した後藤象二郎氏からはお詫びの言葉があり、容堂候も土佐の者は皆、武市半平太切腹に追いやったことを悔いていること、だから武市さんが憂うことは何一つないこと、が綴られ。




 ただ激動の時代だったとはいえ、あなた様と穏やかに添い遂げられなかったことが私には残念でなりませぬが。時代は今、幕末の騒乱期から遠ざかっていた戦乱の足音が、再び近づいてきております。いつになったらこんな事が終わるのでしょうか。いつか人の尊い命が、本当に尊いものとして大切にされる時代が来ると良いですね。




 と結ばれており。江戸の人らしく慣れた風にお手紙をくるくると巻き、一度鼻をすすって顔を上げ、薄く口を開けたまま、かすかに頷いて「ようやくこの時代の意味が分かり申した」と伏目で言う武市さん。深く頷く佐伯さん。




 と、伏目から決意の目になって(これがまた息を呑む目なの。凄味があるというか。ご覧になって)「大義を果たして参ります」と端正に頭を下げ、佐伯邸を出る武市さん。




 と、そこに、海道さんを狙いに行くなら、と立ちはだかる晴香さん。「わしはアザを止めに行くのじゃ」「本当ですか?」「わしは嘘は申さぬ」「だったら私も一緒に行きます」「こういう時、おなごは、しおらしく男の帰りを待つものじゃろ」「現代のおなごはそんなに控えめではないんです」「はちきんな」




 と笑って、武市さんは晴香さんに帳簿のデータを託します。わしはこれをどうしていいか分からん、海道の悪事を世に知らしめてくれ、と。




 そこへ「名演技!」とパチパチ拍手をするコミヤマン&「ご苦労様。データを渡してくれますか」とちょっとぽっちゃりの海道手下。



 「いい加減にして下さい!こっちはね、武市さんに恩義があるんですよ。大和撫子たるもの、絶対に恩は返さなくちゃいけないんです!」素敵に武市ナイズされた晴香さんに笑顔になる武市さんも素敵。




 「いいからデータを渡せ」とつかつか歩み寄る部下に一撃くらわす武市さんですが、うっと傷を押さえた苦し気な様子も魅力的!そこへ薄笑いで「そんな体で俺に勝てると思うのか!」と武器を振り上げた部下を、メリケンサックで一撃、「いってらっしゃい」な理央殿、男前!




 「かたじけない!」と頭を下げ、すばやいナンバ走りの武市さんの後を晴香さんも追います。そこへププッと寅車が。「乗れ」「どういう風の吹き回しじゃ」「おめぇが言ったんだろ。必死に頑張ってるヤツには必ず同志がついてくるってよ」なんていう寅ちゃんの笑顔、ナイス。




 小さく笑って車に乗った武市さんは、安定の正座で。「いい加減普通に乗れよ」「…うん、ベルトは完璧」なんて言っているのも愉快。




 さて、東京、東都テレビでは、アザが短筒で部下を追い払って(志のない人間には真の同志がついてこないからね)、日本刀で海道を今にも斬ろうとした時。刀でカキ〜ンと止めに入る武市さん。




 「どういうつもりじゃ、武市さん?!」「やめるがじゃ、アザ!」その隙に逃げた海道さんは屋上へ。後を追う2人。転んだ海道さんを仕留めようとするアザ。止める武市さん。押し合いながら怒鳴る2人。




 「おんしゃ、おかしゅうなったがか?!」
 「企ては中止致せ!」
 「どういてじゃ?!」
 「どんな理由があるにせよ、人を殺めてはならぬ!」
 「今更何を言うちょる。これは武市さんのやり方じゃろう!」


 「すまぬ、アザ。わしが間違うちょった。東洋様を手に掛けた結果、わしは切腹させられ、同志らは処刑された。最後には何ちゃ残らんかった。目ぇの前の壁を力づくで消すことのみでは何ちゃ解決にはならん。力づくの解決は悲劇を生むだけじゃ」
 「何言うちょる。覚悟致せ!」



 海道に刀を振り上げたアザにバッと羽織を投げて阻止し、立ちはだかる武市さん。



 「ようやっと分かったがじゃ。わしがこの時代に来た意味が。アザ、おまんを止める為じゃ。言うたちそうじゃろう。わししかおらんからのう。おまんを止められるがは。龍馬、もうえぇがじゃ」

 「えぇことないろが」武市さんに斬りつける龍馬。



 「今ん時代が、わしらが戦こうた先にある未来がこんな日本であるはずがない。武市さんもそう思ったがやないがか?!」
 「確かにそう思っちょった。不甲斐ない若者にいきり立った。ただぼうっと暮らす人々が歯がゆかった」
 「ほれやったら?!」
 「けど違うたんじゃ!この平和ぼけした今は、先人の勝ち取ったものなんじゃ。龍馬。時代を嘆くな。今を生きるぜよ」


 「わしは今の時代で同志たちを率いておる身じゃ。今更引けん。筋は通す」
 「わしも譲れぬ」
 「ほぅ。志の違いじゃのう。 ほいやら、やるしかないぜよ」
 「ほぅ、わしらは侍じゃからのぅ」


 とここまで書き起こしっぱなしで、今日の所は一旦置いて。次回東都テレビ屋上の所から、またおさらいできれば、と思っておりますが。




 あのな〜、今日がこのブログを始めて10年目なの。アニバーサリー的なことはあんまり考えないタチなのだけど。




 横アリのソロコンサートに行ったら、錦戸さんが歌が上手かった!ということが書きたくて始めたブログで。最初は短いのを毎日書くつもりで日記と名付けたものの。ごくまれにしか書かなかったり、やたら長くなったり、当初の考えと大分変わってきましたが。のらりくらり10年経ったわ、というささやかな感慨を皆さんにも押し付けてみたりしました。




 だから何だということもないんだけど、一つの節目として、こんなん読んで下さった酔狂な方や、ご厚情を賜った皆様に御礼申し上げます。