にぃにのことを忘れないで1

 少し落ち着いてきたら、亮ちゃんの縁で知ることになったにぃにのことを忘れないために、supi様を見習って、やっぱり何か少し書いておこうかな、という気になりまして…。どういうスタンスで書いたらいいのか、まだよく分からないのですが、まず、自分用のストーリーの覚書を書き始めてみようかと思います。何だかそこから始めたほうがいいような気がして。




 後日、感想というか、演技のことなども、書けたら書こうかなと思っています。錦戸亮の魂の演技のことも覚えていたいから…。














 「…自分の未来は永遠に続くと思ってた…」。人間の未来に貢献できるような研究や発明をしたい、と将来の夢に胸を膨らませていた川井家の長男、「にぃに」こと恵介。小さい頃から文武両道の頑張り屋で、家族の希望の星でした。




 しかし、超難関高校合格の晴れやかな笑顔から一転、痙攣、病気の発覚。当初父母が受けた宣告は余命一年という厳しさでした。隠しても癌であると察知してしまった恵介に動揺する父母でしたが、本人は「ガ〜ン」と父親ばりの駄洒落でおどけてみせます。




 そして、大きな体に小さな羽、物理学的には飛べるはずがないクマンバチが飛べるのは、飛べると信じているからだと、だからクマンバチは不可能を可能にする事の象徴になっている、と話して、「僕も奇跡を起こしてみせるよ。クマンバチみたいに。癌だろうと何だろうと、絶対やっつけてやるから」と笑顔を見せるのでした。




 内心ではすごく怖くて、泣き出したかったのに…。父母の悲しむ顔を見たくないから、必死で強がっていた恵介。15歳にしてこの強さ。そして毒舌の向こう側の深い優しさ。こういういい子ほど神に哀しい選ばれようをされてしまうのでしょうか。




 こうして8年間にも及ぶ辛く苦しい闘病生活が始まります。



 抗癌剤の副作用による発熱、嘔吐、脱毛。いつ襲うか分からない痙攣の恐怖。そんな苦しい治療の日々に耐えられたのは、家族の支えがあったからでした。いつも傍にいてくれる母、「寒い」駄洒落で笑わせてくれる父、痛い腰を押してお百度参りをする祖母、病気であることを忘れさせる笑顔をくれる弟。




 そんな家族の願いが通じたのか、一年後、腫瘍は姿を消します。しかし、喜ぶ父母に医師は再発の可能性があると告げたのでした…。




 学校に戻った恵介は、遅れを取り戻そうと懸命に勉強しました。実際、超難関高校で一年の遅れを取り戻すことは至難の業でしょう。授業では皆の手前質問をすることも躊躇われ、周りに追いつけずに焦った恵介は、眠くならないよう窓を開け放って毛布をかぶって勉強します。そんな姿を見つけて、体の心配をする母と言い争い、「二度と勉強の邪魔するな」と追い出す恵介。




 どうかこのまま…何とか、再発しないで…という祈り。無理をして再発につながってしまったら…という恐怖。息子にそうは言えないけれど、いつ再発してもおかしくない状態なのに…。でも、本人の意志は固く、何を言っても「うざがられる」ばかり。ドア越しに甲斐はないと知りながら「あまり無理しちゃだめよ〜」と声を掛けるしかない母もまた、命を削る思いだったことでしょう。



 しかし、母の心配をよそに恵介は再発することなく高3の秋を迎え、頑張って、頑張ったおかげで全国統一模試で合格確実判定を勝ち取った東大のキャンパスへ弟・優治と下見に出かけたのでした。

 
 ≪続く≫